さんぞく放浪記

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旅行好きが好き勝手するブログです。

天竜川を遡上する 〜飯田線195.7kmの旅〜 2023/7/22

路線長195.7km、駅数94。

これにピンときた方はもうカタギではありません。お疲れ様でした。

冗談はともかく、このデータを持つ路線はただ一つ。そう、飯田線です。飯田線と聞くと古のオタクからは旧型国電の聖地だの佐久間レールパークだの出てくると思いますが、だいたいの鉄道をかじっている人ならば口をそろえて「乗破は過酷」と答えるでしょう。飯田線アイデンティティは路線図からも確認でき、路線長に対し多すぎる駅数を収めるために大抵の路線図はうねりを描いています。もし、手元に時刻表があるならば巻頭の路線図を見ていただきたいです。

元々4つの私鉄をくっつけてできた路線のために山奥にも関わらず駅間距離が大手私鉄並であること、線形が良くないことが合わさり豊橋〜岡谷間の所要時間は普通列車で概ね6時間〜7時間近くとなり…
場合によっては名古屋まで出て中央西線経由で岡谷を目指す方が早いこともあります。

そんな路線には恐ろしいことに7時間近くかけて走破する普通列車が今でも数本存在し、系統分離が進む現代において珍しい存在になりつつあります。

距離に対して完乗に時間がかかるヤバい路線。車はもちろん、原チャリの方が早い。

そんなタイパ最悪の路線を日帰りで攻略したお話です。

 

始まりは東京から。

ここから最近チャイムが変わった東海道新幹線豊橋を目指す訳ですが、後述する飯田線特急に乗ってくれと言わんばかりのひかりがあります。

乗るのはひかり653号。無慈悲にも静岡県自体通過です。リニアができない嫌がらせか?
新横浜を出ると次は豊橋。なんとわかりやすい。

やはり静岡全飛ばしなので早いこと。
9時53分着。1時間20分ほどで到着します。ここから飯田線に乗り換え。f:id:sanzoku_man:20230725120330j:image


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飯田線初めの列車は特急伊那路1号飯田行です。

車両は普通から特急まで受け持つ373系
豊橋発車が10時08分と完全にひかり635号と伊那路1号が乗り継ぎしやすいよう考えられているようで?f:id:sanzoku_man:20230725120417j:image

ここ、豊橋駅飯田線ホームは隣に名鉄線のホームがあります。

あまりにも近すぎて繋がってるみたいに見えますが、マジで繋がっています。というか同じ線路を走ります。ホームですら繋がっているので、ぶっちゃけ到着ホームが違うだけです。

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10時8分。ついに修行の始まり。とりあえずは伊那路の終点、飯田を目指します。f:id:sanzoku_man:20230725121117j:image

少しの間、東海道線と並走し下地を過ぎたあたりでお別れ。f:id:sanzoku_man:20230725121241j:image

続いて豊橋から線路を共用してきた名鉄名古屋本線とお別れ。短時間に名古屋へ向かう2つの路線と別れます。ここは平井信号所と言うらしいです。

豊川、新城と進み、どんどん山の中へと進路をとり、西三河の奥へと進みます。
撮り忘れましたが長篠の近くに長篠の戦いで有名な長篠城がありました。f:id:sanzoku_man:20230725122258j:image

静岡に入るまでは豊川に沿って進んでゆきます。暑い日が連続していたので川遊びスポットには子供連れが多いこと。このあたりから秘境感が深まってきます。f:id:sanzoku_man:20230725145402j:image

ここから先、三遠南信自動車道の建設現場や道路が飯田線から眺められます。

鳳来峡インターチェンジの先を造っているのでしょうか?

飯田線最強のライバルにして最大の敵。これらが全通を迎えた時、飯田線はどうなるのでしょうか。そもそもできる頃には日本が存在してるか?f:id:sanzoku_man:20230725145812j:image

中部天竜豊橋行の伊那路とすれ違い。こんな山の中でも浜松市の区内なのでなかなか面白い。中部天竜といえば佐久間レールパークがあったことが有名ですかね。現在、展示物の多くはメダルを噛む街金城ふ頭のリニア鉄道館に収蔵されています。まだ行ったことがないので早く行きたいな。f:id:sanzoku_man:20230725145914j:image

分かりづらいですが中部天竜を出て橋を渡ると佐久間発電所の横を通ります。飯田線ルーツとの言える電力事業の一つですね。SLにとっては難関ともいえる路線でしたからかなり早い段階で電化され、豊橋ではSLが驀進する天下の東海道線を差し置いて電車を発着させていた歴史があるようで。

ここから天竜川に沿って飯田へ向かいます。

また、ここから飯田線の新線に入ります。ダム建設のために線路を付け替えた区間みたいですが、もうすでに60年以上経過してるので新線感ありませんが…
とはいえ、これまで川に沿って進んでいたところを直線的なトンネルが横たわっているわけですから線形的には新線感はあります。

一部の廃線跡はまだ線路共々残っているみたいです。
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赤い車が走る道は、かの有名な青崩峠へと通じる道。ついに青崩峠トンネルが開通し、道路状況が変わるとともに「捨てられたトンネル」と言える草木トンネルの去就が気になりますね。

ちなみにこのあたりは中央構造線の近く故、土砂崩れが多発。車窓からも確認できるほでした。

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ここは渡らずの橋こと第六水窪川橋梁。先程話したようにこのエリアは中央構造線の近くで地質がよわよわで土砂崩れが連発し線路を通すはずだったトンネル建設が中止、計画とは別ルートを取らざる負えない状態になったので、橋を渡ると元の岸に戻るという不思議な形になりました。f:id:sanzoku_man:20230725151657j:image


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長野と静岡の県境には飯田線で人気を誇る小和田があり、伊那路はそこを通過。

特急はもちろん通過しますが、臨時の急行である「飯田線 秘境駅号」は小和田を始めとする秘境駅に止まりまくるみたいで。

あ、普通列車はちゃんと毎日止まります。

 


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またまた見えてきた三信南越自動車道が見えてくるとまもなく天竜峡です。


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天竜峡からはこれまでの急峻な峡谷が続いてきた車窓が一変。伊那盆地に出るため、典型的な盆地にある街並みが広がります。


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ぐるーんと飯田の街を迂回するように走りますがちゃんと飯田には着きます。
Ωカーブを描くため下山村伊那上郷は真っ直ぐ走ると飯田を経由した列車に飛び乗れるとか?


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豊橋から2時間33分、伊那路の終点の飯田に到着です。もうすでに満足感はありますがこれでも路線の半分いったかどうか...
というか目の前に東日本の211系がいるので「遠くに来た」感がやや薄れる...


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伊那路の感想ですが、「特に急がない」という言葉があてはなる特急でした。流石、日本最遅級の特急です。下手な快速の方が早いです。カーブや交換駅での徐行をじかに感じられるほどの線形の悪さが速達性を損ねていると感じますね。と言っても伊那路が生き残っているのは、やはり周辺道路の整備が関係していると思います。三信南越自動車道が絶賛整備中ではありますが、所々で大型車両が苦戦を強いられるような道路状況ですから現状では伊那路のルートを辿る高速バスが登場しない限りは伊那路は安泰なのではないでしょうか。豊橋~飯田を移動するだけなら絶対車の方が早いけどな...

もう少し先まで運転してもらいたいですが、高速道路の建設・急行こまがねの廃止...
このことを踏まえてあとはお察しください...

ちなみに373系はコンセントは付いてないしデッキは完全に仕切られていないですが割と快適でした。ただ、383系の置き換えが発表されたので今度は373系の番ですかね?


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飯田駅前は良くも悪くもノスタルジックな雰囲気。でも、生活するには困りそうにないです。だって田舎じゃありませんし。ただ、このエリアはリニア中央新幹線の駅ができることが予定されており、完成した暁には大きな変化が待っているでしょう。(40分のないはずだから品川までの所要時間、ワイの田舎よりも早いやんけ...)

まぁ…リニアアレルギーを持つ隣の某県知事のおかけで開業がいつになるか…

リニアを摂取してアナフィラキシーショックを起こしたらまずいのでね?

そんなこんなで飯田の街に着きましたが、すぐに改札に入り飯田線の旅を再開します。


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ここから岡谷までお世話になるのは213系。2ドアで転換クロスシートを備える電車です。元々、関西本線に投入された電車ですが流れに流れてトイレを追加されて飯田線にたどり着きました。ここを終の棲家とするのでしょうか。


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飯田を出ると列車はゴリゴリ音を立てながら急カーブ・急勾配に挑みます。
天竜川によって浸食され形成された高低差の激しい田切地形を攻略するためにカーブを描きながら崖のような地形を乗り越えます。まぁ...新しい道路は高架橋で高低差を帳消しにしていますが。


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高台に出るとこうして伊那盆地を見ることができます。


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駒ヶ根で対向列車を待つために小休憩。改札外へと出てみました。この日は雲が出ていて駒ヶ嶺の方は見ることができず。18きっぷや長距離きっぷだとこうして途中下車できるのが嬉しいですよね。

 

突然ですがJR線内で一番の勾配はどれぐらいでしょうか?廃線になってしまいましたが、大体の人は信越本線の横川〜軽井沢の66.7パーミルと答えるでしょう。ですが現在も存在してる最急勾配はどこか?と聞かれた時パッと答えられる人はあまりいないと思われます。(個人談)


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答えは飯田線赤木〜沢渡の40パーミルです。

飯田線は秘境路線のイメージがあり、あまり山岳路線のイメージがありませんが、先ほどの田切地形のように割と勾配線区の顔も持っていたりします。

箱根登山鉄道井川線のような狂ったような急坂ではありませんが、まるで滑り台のようです。列車は抑速ブレーキを効かせながら通過してゆきます。


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伊那の街を抜け豊橋から5時間32分。15時40分に飯田線終わりでありJR東日本との接続駅である辰野に到達。ですが、列車はここから先、辰野支線を介して中央東線の茅野まで乗り入れ、私自身岡谷まで向かうのでもう少し213系とお付き合い。


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ようやく中央東線との乗り換え駅、岡谷に到着。これでも最速のプランですから飯田線攻略は時間がかかりますね。

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岡谷からはあずさで帰ります。Ë353系って乗るの初めてなんですが、いつも乗っているE657系とあんまり変わりはありませんね。コンプレッサーの稼働音ちょっと気になるくらい。ただ、コンセントの位置がE7のように前の座席の下なのは許しません。f:id:sanzoku_man:20230727172823j:image

あずさに乗っていると上諏訪から諏訪湖がみえますが、この湖はこれまで飯田線で辿ってきた天竜川の「起点」です。ここから太平洋(浜松)に繋がっていると思うと感慨深いですね。

 

あ、このあとは新宿で飯食って帰りました。

 

総評です。
飯田線をできるだけ最速で尚且つ日帰りで帰れるようにプランを組みましたが、割となんとかなるものですね。似たような歴史や雰囲気をもつ身延線は完乗済みなので、身延線の魅力と所要時間を倍にしたような感覚でした。ただ、気軽に攻略できるような路線ではないのでそれなりに覚悟を決めて乗るべきではないでしょうか。
元私鉄だったために膨大な駅数を誇り、急峻な地形から盆地まである飯田線は乗る人を楽しませてくれるはずです。

今度はオール普通列車で攻略か...?

 

ここまで見てくださりありがとうございました。